ESTA登録誤りが発覚し、その場でESTAを申請するというエクストリーム出国を経験した話
ここ数年で一番肝を冷やしたアクシデントといって間違いないと思う。まずは結論から。
スマホでオンラインチェックインを試みる
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特殊なオペレーションが必要というエラーメッセージ
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空港のキオスクでチェックイン
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ESTAの登録がないとスタッフに言われる
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その場でESTAを申請する
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申請が『保留』になる
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約30分後に『保留』から『承認』にかわる
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予定通り渡航
結果的には無事に渡米できたのだが、かなりエキサイティングな経験をしたのでここにまとめておきたい。
なぜかオンラインチェックインができない
今思えば、朝、オンラインチェックインインができない時点ですべてがおかしかったのだ。
エラーは出たものの、メールにはチケットが添付されてきたかのようにpdfが届いた。ただ、そのpdfはこのようになものだった。
This is not a boarding passと書かれているし、バーコードもQRコードもないので、空港でなにかしなければならないことはわかった。
「お前のリザベーションはスペシャルハンドリングが必要だから空港のキオスクでやれ」ということなので、オンラインチェックインができないまま、とりあえず空港に向かった。
フライトは関空からサンフランシスコのユナイテッドの直行便だった。
KIX 16:50 → SFO 11:10
夕方発だったので、早めに関空に行って、チェックインと荷物の預かりを済ませて、ぼてぢゅうでお好み焼きでもつつきながらゆっくり過ごそうと思っていた。プライオリティパスがあれば3,400円分もお好みきや焼きそばが楽しめる。ぼてぢゅうは、プライオリティパスユーザにとってはおなじみなのである*1。
ところが、オンラインチェックインでのエラーメッセージの指示通りに関空のキオスクでチェックインをしようとしたら、またしてもこのメッセージを受け取った。キオスクからチケットかのように出てきた紙切れには、
This is not a boarding pass
というメッセージが書かれていた。キオスクの近くにいるスタッフに声をかけると、信じられないことを言い始める。
「ESTAの登録はされていますか?」
それはもちろん。アメリカが2009年から開始したビザ免除プログラム(VWP)を利用して渡米する旅行者の適格性を判断する電子システムで、アメリカ国土安全保障省(DHS)により2009年から義務化されているErectric System for Travel Authorizationのことですよね。*2。ええ。なんせアメリカ本土は3回目ですから存じ上げておりますとも。
出張の手配が面倒だったので全部HISにおまかせでESTAの代行登録もお願いしていたし、1週間も前にESTAの Application No.もメールで届いていたので、そんなはずはない。仕方ない、きちんと登録があることをESTA公式サイトで確認してみせよう。
え、え、え、待って。
HISにESTAの登録代行をお願いしていたはず。そんなわけはない。何度見ても登録がないことがわかった。
終わった…。
そう思った矢先、ユナイテッド航空のスタッフからこんな提案をされる。
「今からESTAの登録をするしかないです」
え?
ESTAは承認に最大で72時間かかるから、72時間前にやっておいてねというのが公式メッセージなので日次のバッチで刈り取られるとかそういう仕組なのでは?そんなにリアルタイムに承認されるものなの?
「最大で72時間ですが、早ければ30分や1時間で承認されることもありますし、そうでないこともあります。」
まだ時間は14:00だった。フライトの16:50まで2時間以上ある。ここに望みをかけてESTAを自分で登録をすることにした。
その場でESTAを申請することに
今回のフライトの手配は全部HISにのツアー任せていて、ESTAも申請も間違いがあると困るし、なにより登録そのものが面倒だからと代行登録をお願いしていた。正直、フライトのこともホテルのことも何も考えずにとりあえず空港にやってきただけ。そんな感じだった。ESTAのApplication No.のメールは来ていたなと思っていたが、わざわざESTA公式で自分のパスポートとESTAの紐付けが正しく行われているかどうかなど確認していなかった。
なんなら、ぼてぢゅうのことで頭がいっぱいだった。
なんでやねん めっちゃええやん たこ焼き お好み焼きうまいで yeah!
(大塚愛, 2004)
なのである。とんだハプニングに遭遇してしまい、完全にお好み焼きどころではなくなってしまった。
くっそ、HISの不手際か!と少しイライラしながらとりあえずメールでHISにメールで一報いれてから、自らESTAの登録を始めた。
名誉のためというか、完全に単なるとばっちりなので先に言っておくが、結果的にはこちらのミスで、HISに連絡していたパスポートの情報が、かつて使っていた古いパスポートだったことがわかった。
更新が必要だったかは定かではないが、結婚して新しく戸籍を作ったために本籍地の変更のために一度パスポートを作り直していた。古いパスポートの方の現物はどこにやったかすら覚えていないけれど、画像データとして残っていたので、うっかりこの古いパスポートの画像をそのままHISに送ってしまっていたらしい。
つまり、古いパスポートのパスポート番号ではESTAの申請が通っているが、現在のパスポートのパスポート番号ではESTAの申請がされていないという状況だった。ESTAは、そのパスポートが有効か否かなど確認しておらず、申請に対して淡々と承認をくだすだけであるということが、このことも結果から明らかになった。
もう完全に気が動転していた。もし、ESTAの承認がおりなければ、今日はこのままこのスーツケースをコロコロして家にかえるのか。一週間、私が海外出張で家を空けるのに合わせて、妻も子どもを連れて実家に帰っているところだ。一人家に帰って承認を待つなど悲し過ぎる。フライトの振替で余計にお金がかかることになったら会社に説明するのも恥ずかしいし、面倒だな…そんなことが頭によぎっていた。
そんなことを考えながらも、とにかくESTAを登録しなければ何も始まらない。すぐに切り替えてESTAの申請を始めた。
ところが、ESTAの登録画面が使いにくいこと、使いにくいこと。日本語サイトも用意されてはいるものの、バリデーションチェックに引っかかったときに、何がどうだめなのかが分かりづらいので、次の画面に進めない理由を確認するのに手間取ってしまう。
なんとかESTAの画面で必要情報をひとしきり入力を終え、最後の支払いの一歩手前の入力の確認画面を見ていたころに、HISスタッフから電話がきた。私が誤ったパスポート情報をHISに送っていたことに気づいたのは、この電話の時だった。
すべての状況を理解したHISスタッフは電話越しに冷静にこう話す。
「今、支払いの前まで入力が済んでいるので、このまま進めてもらった方がよろしいかと思います。承認は早ければ即時でおりることがあります。ただ、画面上で『保留』のステータスになってしまった場合は、審査に入ってしまうため、大変申し上げにくいのですが、本日中に渡航することが難しいかもしれません。ESTAは審査に最大で72時間かかるとされておりますので。」
という。
なんとかESTA申請の支払いを終えて、表示された画面は、
保留…保留…保留…保留…(残響音含む)
終わった…。(2回目)
HISのスタッフに「保留」になったことを電話で告げると、HISのスタッフは絞り出すように次のプランを提示してくれた。
「古い方のパスポートは今お持ちではないとのことなので、古い方のパスポートの画像をユナイテッドのスタッフに見せて、本籍地変更でパスポートを更新している旨を事情を説明してみてください。古いパスポートにはESTAの登録があるが、新しいパスポートは今申請中で『保留』になっている、と」
話を聞いている段階から、そんな言い訳をドナルド・トランプが許してくれるわけもあるまい、と思っていたがもうやれることはすべてやるしかない。このときすでに15:30を回っていた。フライトは16:50なのでかなり焦っていた。ユナイテッドのカウンターに戻って事情を説明した。
「間違えて古いパスポートでESTAを登録してしまっていて、ESTAの登録がないと先ほどスタッフさんから言われていまして、今すぐESTAの登録をしてくださいという指示を受けたので、さきほど新しい方のパスポートで申請を終えましたが、ステータスが『保留』です(気が動転しすぎて早口で意味不明)。」
ほとんど自分でも何を言っているのかよくわからない状態だったと思う。ところが、ユナイテッドのスタッフはまったく動じていない様子だった。
「何時ごろ申請終えました?」
「5分ほど前です」
「では、そちらにおかけになってお待ち下さい。15:50までに承認が下りたら、チケットを発券いたしますので、そちらでおかけになってお待ちください。」
あれ?なんともいたって冷静だ。完全に拍子抜けした。ユナイテッドのカウンターのスタッフは、まるで、「すぐに承認はおりるから少しそこで待ってて」くらいな扱いをしていて、とても承認に72時間かかる可能性があると考えている人間の動きではないのがこちらにも伝わってくる。もしかして、ESTAの公式メッセージは72時間以内としているが、ほぼ即時で承認がおりるのが通例なのかもしれない、という希望が湧いてきた。
その予感は的中した。ESTAの公式サイトで承認画面をリロードしまくると、画面が『保留』から『承認』に変わっていた。
15:16 申請完了
15:17 保留:申請番号(Application No.)払い出し
15:37 支払い確認済み
15:39 承認確認
結果としてはESTAの申請を完了してから、23分で承認を確認できたことになる。しかし、当時は気が動転していたこともあり、承認を確認してチケットをうけっとたときの安堵のため息の深さは、この人生において最後にしたいと思うほどだった。
ESTAに関する教訓
渡米前に確認を
完全に月並みなことではあるが、「渡米前に確認を」に尽きる。割とこの手のトラブルには用心深くあると自分を過信していたのも良くない。確認は、これだけ入力すれば1分でできる。
- ESTAの申請番号(Application No.)
- パスポート番号
- パスポートに記載の生年月日
ESTAの申請は難しくないので自分でやったほうが良い
2017年に申請したときも旅行代理店に代行をお願いしていたが、今回必要に迫られて初めて自分でESTAを申請した。代行と自分での申請を両方経験した身からすると、「ESTA代行の意味はない」といって良い。
ESTAの申請代行をお願いしたことがある人なら見たことがあるかもしれないが、ESTAに入力すべき内容をExcelのファイル(代理店による)に記載するというオペレーションがどうしても発生する。わざわざExcelに入力するくらいなら、ESTAの書き方サイトに習ってブラウザ上でその情報を入力するのも変わりはないので、余計なお金を代理店に払ってやって貰う必要はない。代理店側もこんな狡い作業をビジネスとしてやりたいわけでもあるまい。
ただ、以下2点は注意。
- ESTAの画面がつかいづらいこと
- ESTAのサイトは日本語サイトがあるとはいえ、最近では珍しいかなり使いにくい画面なのでそれなりに作業に時間がかかってしまう。
- ESTAのフィッシング詐欺
- 最近ではESTAそっくりな画面に誘導するフィッシング詐欺などの被害もあるようなので、公式ESTAかどうかをしっかり確認の上登録したほうが良い。
とにかく、飛べてよかった。