マルコメの涙腺崩壊 90秒広告「『いただきます』と『ごちそうさま』だけじゃ、足りなかったんだなあ」
妻が足を悪くして、台所に立つのは俺だけになった。
妻は「施設に行ってもいい」という。
そう食卓で話す二人。二人で暮らすにはあまりにも大きな冷蔵庫から、きっと子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、実家を出て離れて暮らしていることがうかがえる。
「行きたいのか?」
「そういうわけじゃ、ないけど。」
妻が施設で暮らすことなれば、これまでずっと一緒だった妻とはなれて生活することになる。そこで、俺はこう提案する。
「なら、俺が家事をやればいいんだ。俺がやれば、妻はずっと家にいる。妻はずっとこれをやっていた。」
それからというもの、俺は妻の代わりに台所に立つようになる。あるとき、いつものように二人で食事をしていると、味噌汁をすすった妻がこう言う。
「あら、これ……」
いつもとは違う出汁の味噌汁を作ったことに気がついた妻に、俺は得意になって、
「今日はあら出汁にしてみた。」
そう言うと、妻は心の底から、
「おいしい。」
と、自然に言葉が出た。
うれしいもんだな。「うまい」と言われるのは。
食事の用意をずっとずっと妻に任せきりにして、当たり前のように食べていた食事のことを思い返し、いままで妻の作った料理に「おいしい」と言ってこなかった自分に気がつく。
「いただきます」と「ごちそうさま」だけじゃ、足りなかったんだなあ。
「今夜は何食べたい。」
「ううん……なんでも。」
「そういうのが、一番困るんだ。」
自分が台所に立つようになって、ようやく妻の気持ちがわかり、少しだけ照れくさいような、少しだけ誇らしいような、複雑な気持ちになる。
妻が、ふと思いを口にする。
「不安だったの。私が家事ができなくなったら、どうなるんだろうって……。じゃあ、肉じゃが。お味噌汁は赤だしでね。」
「ああ、任せとけ。」
アニメのなかにマルコメの商品が登場したり、お湯を注ぐだけでかんたんに美味しい味噌汁ができるという、本来は会社として一番に押したい内容をしっかりとおさえつつ、アニメの中に自然と溶け込ませるのがあまりにも見事で、味噌のことなど忘れてたった90秒で涙してしまった。味噌と家庭料理、そして家族というものの親和性の高さをアニメという形で表現が巧みで、すっと入ってくる。
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