じっぱひとからげ

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【費用明細あり】妻が切迫早産で3週間入院したときの費用について

blog.jippahitokarage.com

前の記事では、妻が切迫早産で入院したという経験から、あらためて任意保険の価値について気がついたという話を書いた。幸い、入院後の経過がよかったので妻は無事退院することができた。あとは自宅で安静にして、正産期を待つばかり。

さて、先日、退院にあたって費用の支払いが済んだので、その明細について書いておこうと思う。不運にも、同じ境遇に遭遇してしまったみなさまの参考になれば。

入院にかかった費用明細と内訳の説明

<条件>
・入院日数 23日間
・食事回数 65回
・高額療養費区分 ウ(区分から年収がまるわかり)
・病室は個室でビジネスホテル並の高いサービスレベル
・治療は主にウテメリンの点滴(24h)、NST 2〜3回/日

①負担金が単純に43,242点(432,420円)の3割の129,726円ではなく、81,754円になっているのは「高額療養費制度」の仕組みを利用して、自己負担金上限でキャップされているためである。詳細は後述を参照。

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明細の見方については、こちらを参照して欲しい。
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まずは、「実際にかかった費用全体」の構成として、大きく分けると「保険が適用されるもの」と「保険が適用されないもの」がある。

  • 保険が適用されるもの(診療報酬の点数で表現される)
    • 切迫早産の治療
  • 保険が適用されないもの
    • 保険適用範囲を超えた治療や検査など
    • 部屋代
    • 食事代自己負担分(1食360円分)

上記費用のうち、「保険が適用されるもの」は後述の「高額療養費制度」の仕組みを使うことで、支払い上限が設定されるため、どんなに治療が高額になってもある一定の額をベースとした付近の金額にとどめることができる。

しかし「保険が適用されないもの」については、上限なしに入院期間が長くなればなるだけ自己負担額が増えていくため、注意が必要である。

入院費用を抑える方法はただ一つ「個室を諦めること」

入院費用を抑える方法は一つしか無い。それは「入院する部屋のサービスレベルを諦めること」だ。

上記の内訳を見て分かる通り、「保険が適用されるもの」は上限でキャップされるので、治療の金額がいくら高額になってもある程度でおさえることができるが、「保険が適用されないもの」は際限なくお金がかかる。

特に、「差額室料」と呼ばれる部屋への課金は「入院する部屋のサービスレベル」で決まる。端的に言えば、宿泊するホテルを部屋の大きさやサービスで選ぶように、そのサービスレベルによって金額がかわるのである。

例えば、大きく影響する要素で言えば個室なのか、複数名で部屋をシェアするのかによって差額室料の額が変わってくる。これは病院に依存するので、「差額室料はいくらか」と病院に確認すれば教えてくれる。

私の場合は、職場の近くにある病院で通いやすかったことと、ただでさえ精神的にも肉体的にも不安定な状況下で過ごさなければいけない妻のこと考慮して、費用はかさむが個室を許容するという判断をした。もちろん、金銭的にそれが許容できなければ、差額室料が少ない、あるいは、ゼロの病院に移ることも可能である。

ホテルの料金をイメージしてもらえるとわかりやすいと思うが、妻が入院していたのは、京都の田舎の病院なので、差額室料が都内のそれと比べると比較的安かったが、個室で専用の洗面台、トイレがあり、テレビもあり、Wi-Fiによるインターネットも完備され、お湯を沸かすポットもあり、毎日清掃がきてゴミを捨ててくれて、コーヒーやお茶も補充してもらえるという至れり尽くせりの良い環境だった。差額室料の負担は大きいけれど、気持ちよく入院生活を送れることを考えると検討しても良いかもしれない。

もちろん病院側も、勝手に患者を個室の病室に入れて差額室料を徴収することはできないので、入院時に必ず差額室料の額面が入った同意書に患者がサインをしてもらうことになっている。もし、差額室料を払うつもりが無いのであれば、この同意書にサインをせず、差額室料がかからない病院を希望すれば、差額室料が少ない病院を紹介してもらえる。

入院費用を抑えるには、「差額室料を下げる」以外の選択肢はない。

入院が決まったらまず「健康保険限度額適用認定証」を手に入れよう

入院するとなると、毎日治療が行われることから医療費が高額になることが自明である。そんなときは、高額療養費制度を利用することをオススメする。

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高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成29年8月から平成30年7月診療分まで)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000167493.pdf

これを利用することで、一時的に高額になる療養費をある上限をベースとして急激な増加をおさえることができる。私の加入している健康保険組合の場合、保険証を使って支払った金額がこの上限に達した場合、自動的に還付される仕掛けになっているらしい。しかし、支払いから上限を超えた分を還付されるまでに3ヶ月かかることになっている。あとから戻ってくるお金とはいえ、高額な出費でキャッシュフローを圧迫するし、そもそも無利子でお金を遊ばせておくこと自体がもったいない。

そこで、この「高額療養費制度」の「健康保険限度額適用認定証」をすぐに手に入れて欲しい。これを保険者から手に入れて、事前に病院に出しておくことで、支払ってから還付を受けるのではなく、請求時点で高額療養費の上限以上を支払わずに済むようにできる。

あなたが会社員なのであれば、会社の保険証に書いてある「保険者(例:XXX健康保険組合 など)」に「健康保険限度額適用認定証が欲しいので手続きを教えてほしい」と伝えれば良い。手続きの仕方は、保険者による。私の入っている会社の健康保険組合の場合、所定の書類に必要事項を記入して送付すると、翌日にはこの健康保険限度額適用認定証が手に入った。
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ここに書かれた「適用区分」は被保険者の年収によって変わってくる。つまり、適用区分「ウ」である私の年収は、逆算すると約370万円〜約770万円の間ということになる。ここで、ハイスペックな「イ」や「ア」に該当する人は、高額療養費の上限がゆるいため、この高額療養費制度の恩恵が少なくなる。稼いでいる人は、こと高額療養費制度においては、健康保険の恩恵が少なくなってしまうことになる。

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高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成29年8月から平成30年7月診療分まで)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000167493.pdf

具体的に、今回受けられた高額療養費制度の恩恵について説明しておく。

今回、妻の入院でかかった医療費(ここで言う医療費は、診療報酬の点数を指す)は、43,242点である。診療報酬は1点10円計算なので総額で言うと、

43,242 x 10 = 432,420円

になる。もちろん、我々が全額負担するわけではなく、自己負担は3割で残りの7割は健康保険から支払われる。

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なるほど診療報酬!|国民のみなさまへ|日本医師会

つまり、計算上は自己負担は以下のようになる。

432,420 x 0.3 = 129,726円

ただし、ここで高額療養費制度の区分 ウの場合を考えてみると、医療費の自己負担上限額は、以下の通り。

80,100 + (医療費[432,420] - 267,000) x 0.01
= 80,100 + 1654 (小数点以下切り捨て)
= 81,754

区分 ウの自己負担上限は81,754円なので129,726円全額を負担する必要はない。上記の、「健康保険限度額適用認定証」さえ病院に提示しておけば、81,754円だけが請求されることになる。

食事は自己負担1食あたり360円

食事については、実際に発生する費用は、以下の通り。

入院時食事療法I…1食あたり640円(管理栄養士によるチューニングあり)
入院時食事療法II…1食あたり506円(チューニングなし)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000112230.pdf

特に入院中は意識していなかったが、別途もらった明細には「入院時食事療法II」の表記があったので、今回のケースでは、入院時食事療法IIの1食あたり506円だった。塩分を控えたり、カロリーを控えたり、といった食事に関する制限がない場合はこちらになる模様。1食506円で計算すると、明細とつじつまが合う。

506円 x 65回 = 32,630円

ただし、自己負担金は健康保険法で定義されている1食360円なので、

360円 x 65回 = 23,400円

となっている。

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平成28年4月から 入院時の食費の負担額が変わります
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000117331.pdf

確定申告で所得税が還付されるのは「医療費控除」のことであり、まったく別の話

今回紹介した「高額療養費制度」と、「年間10万円を越える医療費」がキーワードになる「医療費控除」はまったく別の仕組みなので混同しないように。

・「高額療養費制度」は、健康保険法で定義された仕組みで、申請する先は「保険者(健康保険組合 など)」で、高額な医療費の負担そのものを抑えることを目的としている。

・「医療費控除」は所得税法で定義された仕組みで、申請(確定申告)する先は「税務署」である。確定申告では「年間を通して10万円を越える医療費」は、10万円を超えた分の額面だけ所得から控除することが認められている。非課税になった分は、給与から天引きされた所得税から還付されるので、1月から12月までに支払った医療費の領収書は残しておこうという話になるのである。

同じ医療費の話ではあるが、これらはまったく別の仕組みである。ここで紹介した高額療養費制度をもってしても自己負担を余儀なくされた金額が、年間10万円を越える医療費に該当するのであれば、確定申告をすることで10万円を超えた分が所得から控除され、その分の所得税が還付される。

高額療養費制度を利用するほどの支払いなのであれば、おのずと医療費が10万円を超えていることだろう。無駄に多くの所得税を払わなくても済むように、確定申告も忘れずにすることをおすすめする。