じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

人は怠慢であるという性質を認めて「惰性課金」を卒業しよう

人間は愚かだ。怠慢だ。この事実はしっかりと認めた上で、自分にとっての最適解を選択しよう。なにも自分を責める必要はない。みんなそうなのだから。

人は判断が複雑化すると不合理な決定をしてしまう

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TEDのこの動画で語られているように、「人間は必ずしも合理的な意思決定をするとは限らない」という興味深い研究例が示されている。気になる人は動画を見て欲しい。また、この動画に登場するダン・アリエリー氏は、かつて、NHKの白熱教室でも取り上げられていた。白熱教室は全6回でたっぷり行動経済学について語られていてとてもわかりやすいので、見る方法があればぜひ見てみて欲しい。

前述の動画(9:12〜)では、医師でさえも不合理な意思決定をしてしまうという話をしている。その中で話されている例は以下の通りだ。

医師らを2つのグループAとBに分けて、以下のような質問をする。


<前提>
ある患者は股関節を患っており、いかなる薬も効果が認められなかったため、あなたは患者に人工股関節置換の手術を勧めた。そして、患者の手術のための手続きは進んでいった。ところが、あなたはあることに気がついてしまった。


<質問>
A:患者についてよく調べてみると、ある1つの薬イブプロフェンを試していないことに気がついた。あなたは患者を引き戻して、イブプロフェンの投与を試すか?それとも、そのまま手術を受けさせるか?


B:患者についてよく調べてみると、ある2つの薬イブプロフェンとプロキシカムを試していないことに気がついた。あなたは患者を引き戻すのか?引き戻すのであればどちらの薬を投与するのか?あるいは、そのまま手術を受けさせるか?


<結果>
Aでは「ほとんどの医師が患者を引き戻してイブプロフェンを試す」ことを選び、Bでは「ほとんどの医師がそのまま手術を受けさせる」ことを選んだ。

本来は試すべき薬を試していないことを考えると、患者を引き戻さずに手術を受けさせるのは合理的な判断とは言えない。しかし、一手間判断が難しくなったとたんに考えることをやめて、すでに決まっているもの(デフォルト)にしたがってしまうという、人の怠慢さがよく表れている実験結果である。

そう、人間は怠慢なのだ。それをまずは自覚しよう。

解約の手間が惰性課金を継続させる

世の中にはあこぎな商売が数多く存在する。契約は簡単なのに、解約が難しいというサービスがなんと多いことか。ダン・アリエリー氏が紹介するような研究結果を知ってか知らずか、解約を難しくすることで諦めさせようとするサービスが本当に多い。しかし、我々はこのような消費者をバカにするような戦略に屈してはならない。ここで彼らの戦略に飲まれていては本当にただの愚か者で終わってしまう。負けてはならない。

そもそも解約の仕方がわからない

サービス提供者側からすると、ネガティブな機能である「解約」はわかりづらくしてあることもある。さすがに、昨今は消費者もこうして声をあげられる時代になってきたので、あからさまに隠すようなサービスは少なくなってきたかもしれない。あまりに露骨に解約の方法を隠すと、すぐその事実が明るみに出てサービス提供者側にかえって悪評が立つということも起こり得るので、そこまで悪質なものに出会うことは少なくなってきたとは思う。

解約を難しくしているケースでは、解約の仕方を調べているうちにイライラが募り、調べるのを辞めてしまう。あるいは、解約の仕方を調べているうちに集中力が切れて、他のことをやり始めてしまうなど、いつのまにか解約しようという気持ちがどこかに消えてしまうということもある。

嫁は結婚する以前、某フィットネスクラブに通ってもいないのに惰性で課金し続けていたことがあった。もちろん、最初から全然通っていなかったわけではない。むしろ、よく使い倒していた方で目標を持って計画的に通っていた。友人らと海に行くんだ。水着を着るんだとはりきっていたが、海に遊びに行くイベントが終わった途端に目標を失い、通わなくなってしまった。「行きもしないフィットネスクラブに課金し続けるなら、辞めたら?」そう話すと、思わぬ答えが返ってきた。

「解約するには、現地まで行かなきゃだめなんだよね」

そんなことがあるのか?にわかに信じがたかった。とりあえず電話一本入れて、解約のための書類を送ってもらえば良いのでは?そう思っていた。しかし、この某フィットネスクラブは「現地での解約受付」の一点張りだった。

もう今後使わないサービスのために足を運び、時間を使わなければならないというこの行為は苦痛だ。この苦痛こそがこのフィットネスクラブの解約を先延ばしにさせているのは間違いなかった。

これは彼らの戦略だ。フィットネスクラブを解約したい人は、当然フィットネスクラブに足を運ぶことがなくなってしまった人である。そんな人にわざわざ現地まで足を運ばせるのは、フィットネスクラブ側が解約へのハードルを故意にあげていると言わざるをえない。

解約しようとすると理由をたずねられる

解約したいと考えているのだから、もう訣別したいということははっきりしている。にも関わらず、「サービス向上のため」などという理由で解約の理由をたずねてくる。我々、消費者からすればもう解約したいと考えているサービスのことなど知ったことではない。もちろん、サービス提供者からすれば、理由もわからずに会員がどんどん減っていくということになれば、「どうなってるんだ!」、「どうしてこうなったんだ!」ということを問われるに決まっているので、気持ちはわからなくもない。とはいえ、あからさまな引き止めはイラ立ちを通り越して呆れさえする。

「料金が高すぎるから」
 →月額料金が安くなる年間契約プランをご存知ですか!?

「サービスが良くない」
 →こんなサービスもあります!ご存知でしたか!?

好きでもない相手に、どうしてそこまで尽くさなければならないのか。もう、うるせーよ。やめさせてくれよ。話はそれからだ。

しかし、ここで感情的になってはならない。こんなことで負けてはならない。彼らは故意にあなたを解約から遠ざけるように仕向けてきているのだ。ここでもう一度よく思い出して欲しい。「人は怠慢である」と。そして、彼らはこの、人の怠慢にかまけて金儲けをしようとしているということを。

解約に「違約金がかかる」という精神的ダメージ

年間契約の場合は、契約満了までの期間について違約金が発生するというケースがある。「本来発生しないはずだった余計な負担が増える」という精神的ダメージが、解約を思い留めさせる。

でも、冷静に考えてみて欲しい。もっと他のことに使えたはずのそのお金が、使いもしない、好きでもないサービスに流れて続けていることを。

「違約金」という響きに決して惑わされてはならない。「違約金」という響きから「一年間の契約と約束したのに、その約束を途中で破るという不届き者」にでもなったような気分がしてしまうのかもしれない。ただ、実際にはそう感じているのは自分自身だけだ。彼らはそんなこと、なんとも思ってはいないだろう。

もう少し厳しいことを言おう。その「違約金がかかってしまうから」という理由が、自分自身を解約というの煩わしい作業から解放する都合の良い理由として、惰性課金を続けることを選んではいないか?

違約金を払うことは、自己否定ではない。勇気をもって違約金を払おう。あなたは正しい選択に近づこうとしている。

契約直後に即解約する「解約予約利用」という考え方

人は怠慢である。という前提に立って、契約直後に解約を申し込んでから利用する「解約予約利用」を提唱したい。

月額課金サービスは、月々のある締め日をまたいだタイミングでクレジットカードに課金されるケースが多い。逆に、解約の場合は、申し込んだその日に即日サービス利用が停止するわけではなく、締め日まではサービス利用を継続されるということが多い。

最近では、解約直前の画面に「MM/DDまでサービス利用が可能」と明示してくれるものもある。これはおそらく、サービス提供側のシステムの都合であったり、ユーザとのもめごとを最小限にするための工夫なのだろう。即日サービスを止めると、残りの日数の日割がどうだこうだともめごとに派生しかねない。払った分は返金しないが、払った分のサービスはいやでも受けてもらうと割り切ったほうがサービス提供側としてはきれいなので、即日サービスを止めるようなことはしないのだろう。

そこで、この仕組みを逆にうまくつかっていきたい。

解約しても即日サービスが停止されないのであれば、契約した直後に解約を申し込むことで、翌月に自動課金されずに立ち止まる機会を設けられる。という状態を作ることができる。

幸いなことに、昨今の月額課金サービスは「契約事務手数料」のような、契約のたびに発生するような意味不明なお金の取り方をしていないので、何度契約しても、何度解約しても、同じ金額で利用できるものが多い。何度契約しても、何度解約しても同じ料金を課金されるのであれば、本当に使うときにだけお金を払い、使わないときにはお金を払わないという整理にしたほうが良いに決まっている。

解約する日は事前に予約されているので、このタイミングで、このサービスに継続してお金を払う価値があるのか考えるのだ。いや、もっというと、考えるスキも与えずにそのサービスが停止するのである。サービスが停止して、自分は困ったか?本当に困ったのであれば、また課金すれば良い。ただそれだけの話だ。課金を開始すればまたこれまでと同じようにサービスが利用できるのだから。

解約を事前に決めて置かなければ、「惰性課金」を継続してしまうほど人は怠慢である。愚かである。その前提にたって契約・解約の考え方をあらためて、「惰性課金」を卒業しよう。そして、浮いたお金でもっと良いサービスに課金し、より良いサービスを育てていこう。