「大人になるってことは、お互いがあまり傷つかずに済む距離を見つけ出すってこと」
ハリネズミのジレンマ
たまたま動画サービスでヱヴァンゲリヲン新劇場版:序が無料で見られるという期間中だったので、何気なく見ていたらふとある言葉が耳にとまった。
葛城ミサトが赤木リツコにシンジの難しい性格について相談したときに、リツコから「ハリネズミのジレンマ」のたとえ話をされる。
リツコ「そうね、確かにシンジくんって、どうも友達を作るには不向きな性格かもしれないわね。ヤマアラシのジレンマって知ってる?」
ミサト「ヤマアラシ?あのトゲトゲの?」
リツコ「ヤマアラシの場合、相手に自分のぬくもりを伝えたいと思っても、身を寄せれば寄せるほど、体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ。」
ミサト「ま、そのうち気づくわよ。大人になるってことは近づいたり離れたりを繰り返して、お互いがあまり傷つかずに済む距離を見つけ出す、ってことに。」
(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 より)
「大人になるってことは、お互いがあまり傷つかずに済む距離を見つけ出すってこと」か。なんだか言い得て妙だな、そう思った。
「お互いがあまり傷つかずに済む距離を取る大人」になった
私は平凡な大人になった。決して悪い意味ではない。
小学校に入る頃にJリーグが発足し、別にサッカーが好きだというわけでもないのに、みんなこぞってキャップJリーグのキャップをかぶっていた。ヴェルディは誰で、横浜マリノスは誰、今でも顔が思い浮かぶ。
ファイナルファンタジーが好きで発売日を迎えると仮病で学校を休んでまでプレイしたのも思い出す。セブンイレブンでゲームの販売を始めたのはファイナルファンタジー7の頃だったか。新山千春が出ていたCMのことを思い出す。セブンイレブンいい気分。今ではもう聞かなくなった。
かろうじて地方の国公立大学にすべりこめるだけの学力をもって大学に入学し、学習塾の講師というアルバイトに夢中になりすぎて留年しながらもなんとか卒業し、さらに大学院を出て就職で東京に出た。
結婚とは無縁だと考えていた20代後半に、いわゆる"友人の紹介"で妻と出会った。齢を重ねるごとに結婚に対する考え方が変わって30歳で結婚した。
5年半勤めた会社にも区切りをつけて、東京から京都の田舎引っ越し、田舎暮らしを満喫している。今では1歳になる息子と3人で暮らしている。子どもという存在がこんなにも愛おしいものなのかと、息子の成長を日々見守っている。
絵に描いたような平凡な毎日である。この上ない幸せな日々であることには間違いない。ただ、そんな私も、もうすぐ34歳になる。いわゆる"35歳問題"がちらついてくるお年頃だ。プールサイドの男*1ほど仮定法の亡霊に悩まされることはないけれど、これまで出会ってきた人々のことをふと思い出す。小学校、中学校、高校、大学、そして、東京で過ごした最初に入社した会社の同期らなどの同世代では、誰もがある程度共通の経験を持ち、そこで得てきた価値観の中に生きてきた。しかし、20代後半から30代前半にかけて、生き方がそれぞれ大きく分かれ始めていると感じる。本当に人生はいろいろだ。
みんなどうしてるかな。
*1:回転木馬のデッド・ヒート(村上春樹)の短編「プールサイド」を参照