じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

誕生15周年記念 くまのがっこう展「作家以外の人が入ると純度が濁る」

大型連休の終盤、銀座松屋8Fで催されている「誕生15周年 くまのがっこう展」にいってきた。東京会場は2017/04/19-2017/05/08なので、今日を含めて残り2日。このあと夏に仙台会場、冬に大阪会場での開催が予定されているらしい*1

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くまのがっこうが好きな人はもちろん、くまのがっこうのことがよくわからない人が行っても、作家の二人が大切にしている世界にふれることができるので、足を運んでみて欲しい。

jackie-exhibition.jp

嫁がこのくまのがっこうが大好きで、くまのがっこうグッズがあると必ずと言って良いほど飛びつく。確かに水彩画タッチのくまのキャラクターはとてもかわいいので、好きになる気持ちもわからないでもない。

2002年にあいはら ひろゆきさんとあだちなみさん、
ふたりの手によって生み出された絵本「くまのがっこう」。
なにげない日常の中にある、あたたかさやしあわせが描かれたこのシリーズ
2017年、誕生から15周年をむかえました。

この展覧会では、シリーズ誕生前の貴重なアイディアメモやスケッチをはじめ、
できたての最新作「ジャッキーのしあわせ」を含むシリーズ15作品から、
選りすぐりの絵本原画約200点を紹介します。
さらに、展覧会のために描きおろした原画や創作風景の映像なども更改。
「くまのがっこう」の世界の原点と"今"をあますことなくお楽しみください。
(出典:誕生15周年記念 くまのがっこう展

 
たまたま東京に出て来る機会もあったので、嫁が愛してやまないくまのがっこう展に付き合ってあげようくらいな気持ちで行ってみた。ここで、やっぱりジャッキーかわいいね、グッズたくさん買ったね、良かったね、だけではつまらないので私なりのくまのがっこう展の感想を共有しておこうと思う。

「作家以外の人が入ると純度が濁る」

私の中で、この言葉は強烈に印象に残った。これはくまのがっこうの文を書いているあいはらひろゆきさんの言葉だ。正直、私はこのくまのがっこう展に来るまで、くまのがっこうについてよく知らなかった。もちろん、くまのがっこうのキャラクターは知っていたし、絵はすぐに頭に思い浮かんだ。ただ、作品も一つも読んだことがない。

くまのがっこうと聞くと、かわいらしいくまの絵ばかりが思い浮かんでしまうが、作品の起源とも言える原作である文を書いているあいはらひろゆきさんが、このくまのがっこうのファンが集う「くまのがっこう15周年記念」という場で流れる映像の中で、この言葉を選んだことから、原作者*2であるあいはらひろゆきさんの思いの強さがうかがえる。作家以外の人が間に介在したことでうまくいかなかったことでもあったのだろうか。

あいはらひろゆき さん

二人でベストと思えるところまで、二人で固める。原石のような世界を共有する。そこに作家以外の人が入ると純度が濁るところがある。二人でまず共有して作品に仕上げる。


あだちなみ さん
最初にあいはらさんに絵本よりも、もっと長い形で出してもらって、時間をかけて自分の中でお話をつくり上げる。「ちびラフ」と呼んでいる原寸よりも小さいラフを描いてあいはらさんに相談する。


どうしてもゆずれないところは、色と画面構成。これはずっと大切にしている。結果として、最近では、以前よりも下書きに時間がかかるようになった。1mm単位まで画面にこだわるようになった。色については塗りたい色を塗っているだけなので、説明しにくい。
(出典:誕生15周年記念 くまのがっこう展 絵本創作過程 撮り下ろし映像より 意味を変えずに文言を修正して書き起こし)

あだちなみさんが絵本創作過程で、ジャッキーのステッチ風の点線部分を描いているシーンが映っている。たぶん、このペンはたぶんPILOTのHI-TECH-Cだと思う。

ちびラフから見えてくる緻密な設計

自分に子どもでもいなければ、普通、絵本を熱心に読むことなどないだろう。関係者が読んでいたとしたら本当に大変申し訳無いが、自分の中での絵本というのは、対象が子どもであることもあり本のページ数自体も少ないので、さっと簡単にできてしまうのではないかとさえ思っていた。ところが、今回このくまのがっこう展で初めて絵本をつくる過程に触れて、その考え方が変わった。

前述の絵本創作過程のあだちなみさんのちびラフには1mm単位へのこだわりが随所に表れていた。相手が子どもだからこそ、シンプルな絵で、シンプルな言葉でメッセージを伝えるということの奥深さを感じた。くまのがっこうは二人の緻密な設計によってつくりあげられていることがとても良く伝わってくる展示だった。メインの展示は撮影禁止なので、このくまのがっこうが作られるまでの設計の過程をその目で見てみて欲しい。

*1:誕生15周年記念 くまのがっこう展

*2:くまのがっこう展では「原作者」という表現は使われていなかった。文・絵どちらが「原」作であるということはないということなのかもしれない。