じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

食器洗い機を導入するまで知らなかった3つのこと

大学時代、電子センサ工学を担当していた教授が15週の講義の1週目の導入部分で、食器洗い機の話をしていた。講義の導入という意味では、今どきの家電はセンサによる制御をするようになっているという話で、食器洗い機について言えば、汚れの度合や食器の位置をセンサで判定して効率よく洗うことができるのだという話だが、アイスブレイクもかねてこのような話をしていた。

食器洗いは家事の中でも負荷が大きい。食器洗い機を導入することで自分も妻もその煩わしさから開放され、夫婦は円満になるのだという。特に役割分担をしているわけではないが、食器洗いはもっぱら私の仕事というような状態だったので、食器洗い機を導入して本当に良かったと感じている。先生の教えは本当だった。

食器洗い機導入前は知らなかったこと

食器洗い機など一度も触ったことはなかったし、導入しようとも考えたことがなかったので、食器洗い機に関する情報がゼロから始まった。食器洗い機を導入しようと検討を始めるまで知らなかったことがいくつかあったので共有したい。

(1)食器洗い機はそもそも選択肢が少ない

よーし、食器洗い機を導入するぞ!どれにしようかな。とラインナップを見始めたときにすぐに気づくことになる。そもそも作っているメーカーも少ないため、選択肢が少ないのである。

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(出典:価格.comにおける売れ筋のメーカー 2017年3月のトレンド
【価格.com】食器洗い機 | 通販・価格比較・製品情報

ここに価格.comの2017年3月のトレンドを示すグラフがある。ここに登場しているメーカーを見て欲しい。売れ筋TOP 3は日本のメーカーでPanasonic、Rinnai、三菱電機の順になっているが、Panasonicの独壇場であることがうかがえる。さらに、続くミーレ(Miele)、ガゲナウ(GAGGENAU)はドイツ、エレクトロラックス(Electrolux)、ASKO(アスコ)はスウェーデンの家電メーカーである。価格.comに登場するのはこの7社に限られる。

さて、この7つのメーカーのうち価格.comでPanasonicが独走しているのはなぜか。こたえは簡単で、この中で唯一「据え置き型(卓上型)」の食器洗い機を製造しているということである。

食器洗い機には大きく分けて「据え置き型(卓上型)」と「ビルトイン型」の2種類が存在し、食器洗い機といえば「ビルトイン型」が主流なのである。「据え置き型(卓上型)」と「ビルトイン型」はその名の通り、以下のような特徴がある。

  • 据え置き型(卓上型)
    • 他の家電同様、設置場所を自分で決めて配置するタイプ。場所を決めて設置したあと、電源をコンセントに挿して、給水用のホースを蛇口に取り付ける。給水用のホースを接続する口がない場合は別途、分岐水栓を取り付ける必要がある。
  • ビルトイン型
    • キッチンの設計・施工の段階で備え付けられているタイプ。システムキッチンの中にコンポーネントとして組み込まれる。

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(出典:日本における「食器洗い乾燥機文化」のパイオニアとして市場をリード
食器洗い乾燥機生産開始50周年 2010/03/11
食器洗い乾燥機生産開始50周年 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan

こちらのグラフは、独走しているPanasonicの食器洗い機生産開始50周年の2010年のプレスリリースに掲載されていた食器洗い機の需要と普及を示している。2004年を境に「ビルトイン型」が「据え置き型(卓上型)」を上回っていることがわかる。

それもそのはず。実際に食器洗い機を導入してみて気がつくが、食器洗い機はかなりキッチンの中の場所をとる。このように場所をたっぷりとる食器洗い機は、キッチンの設計時に取り込んでおいたほうが、より自然にキッチンの中に導入できるに決まっている。

システムキッチンの中に「ビルトイン型」の食器洗い機はついていない賃貸だけれど、どうしても食器洗い機を使いたい、という人のための「据え置き型(卓上型)」なのであって、メインストリームからは外れている。

パナソニックによると、2012年度の食器洗い乾燥機総需要は約73万台で前年度実績比5.8%増。タイプ別の構成比を見ると、ビルトイン型が約72.6%と大半を占めるのに対して卓上型は27.4%にとどまる。システムキッチンの普及拡大に伴って食器洗い乾燥機を組み込むケースが増えているためとみられる。そうした背景からか、このところ卓上型食器洗い乾燥機から撤退するメーカーが相次いでいる。5~6人分の食器を洗えるファミリー層向けの本格的な卓上型を開発販売している主要メーカーは、いまやパナソニックくらいしか見当たらない。

 この分野から撤退したあるメーカーに聞くと、「水栓取り付けに手間がかかるなどサポート体制にコストがかかるし、価格競争で利益が出にくくなった」という。
(出典:競合なき卓上型食器洗い乾燥機 自動で節電、節水も
パナソニック「NP-TR6」 日本経済新聞 2013/05/06 7:00
競合なき卓上型食器洗い乾燥機 自動で節電、節水も :日本経済新聞

据え置き型は前述の通り、蛇口に分岐水栓を取り付けるための工事が必要になるため、蛇口メーカーやハウスメーカー、施工業者とタッグを組んでサービスを提供する体制を整えなければならないため、他のメーカーは割に合わないと相次いで撤退していったという。

事実、価格.comの絞り込み検索で、「据え置き型(卓上型)」にチェックを入れると、

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Panasonicしか存在しない。

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つまり、据え置き型(卓上型)の食器洗い機が欲しくなったら、Panasonic一択で選択肢がないのである。

我が家も例外なく、Panasonicの据え置き型(卓上型)の食器洗い機を導入した。

jippahitokarage.hatenablog.com

(2)食器洗い機専用の洗剤がある

「専用」と勝手に名前をつけて無知な人間から金を巻き上げようとしてるな!このやろう!と直感的に感じたが、Panasonicの食器洗い機の注意書きが興味深い。

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(出典:NP-TR9 取扱説明書 安全上のご注意)

「台所用洗剤を使うと大量の泡が発生します」これがなぜだめなのかあまりピンとこなかった。泡は出れば出るほど嬉しいのではないか、とそう思った。食器洗いが手動から自動に切り替わるだけで、同じ食器洗いには変わりないだろうと。説明によれば、泡を消すため、運転時間が長くなり、水の使用量も増える原因になります、とある。つまり、裏を返せば「専用洗剤は泡が少ない」と言い換えることもできる。

どうやら、食器洗い機と手洗いでは同じ食器洗いでも「手でスポンジでゴシゴシ」する場合と「高温の水をつかって水圧で汚れを弾き飛ばす」という手法がそもそも違うので、もはや同じ食器洗いとは言えないということらしい。メーカーのQAは以下のようになっている。

LIONの回答
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手洗い用の台所用洗剤と食器洗い乾燥機用洗剤はどう違いますか。

P&Gの回答
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https://www.myrepi.com/tag/myrepi-joy-tips-dishwasher-detergent

食器洗い機専用洗剤と手洗い用洗剤の違いでおもしろいのは、食器洗い機で食器を洗う場合、洗剤が肌にふれることがないので、肌のことを一切無視して、洗浄能力だけのことを考えれば良いことになるという点である。

よくテレビCMで聞いた文言である「手肌に優しい」を完全に無視して「お皿をきれいに洗えさえすれば、手肌に厳しくても構わない」という点である。手肌に厳しく、素手で触れないレベルの高温で洗浄するのが食器洗い機による食器洗いなのである。当然、手洗いよりもきれいに仕上がることは言うまでもない。

(3)時短というより「ちょっとした時間」が使えることがうれしい

食器洗い機は時短になるので良い、ということがうたわれることはよくある。しかし、食器洗い機による時短というのは、この表現だけでは足りない。単純に20分かかっていたところが5分で済むようになったから15分短縮できたということがうれしい、これだけでは表現として不足している。

食器洗い機を導入する以前は「食器を洗い始めてから洗い終わるまでに20分かかるので、20分というまとまった時間を割く必要がある」という考えがあるため、朝の出勤前に皿を洗うことはなく、朝食のお皿はすすぐだけにして、晩御飯で使った食器と合わせて一気に洗うというのが日常だった。食器洗い機を導入してからは「セットするまで5分で終わる」という考えがはたらくため、朝食後の出勤前の5分でセットしておくと、帰ってくる頃には洗いあがって乾いた食器を片付けられる。晩御飯のあとは5分で使った食器と、お昼のお弁当箱をセットすれば、翌朝には洗いあがって乾いた食器を片付けられ、お弁当箱は翌日もすぐに使えるという具合に「ちょっとした時間」に食器洗い機にセットできる。その結果、「よし、やるぞ」と20分を確保する食器洗いという家事から、思い立ったときにすぐできて、すぐに完結する簡単な家事へと変化するのである。

それどころか、我が家では買ってきたパックのお刺身の盛り合わせをお皿に移し替えて、料理の見た目を楽しむ余裕すら生まれた。料理が映える食器を探したり、お気に入りの箸を探すなど、料理を見た目から楽しむ心の余裕は、食器洗い機を導入したことによって得られたものである。食器をたくさんつかっても、すぐに食器洗い機にセットして洗ってしまうので、シンクに食器がたまっているということはほとんどなくなった。

食器洗い機は家庭に平和をもたらす。私の中で、2016年に買ったルンバ*1についで、買ってよかったものランキング上位に食い込むことは間違いない。