じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

5年で4つのシェアハウスを渡り歩いた私がおすすめするシェアハウスの条件

25で東京に出てきてから30で結婚するまでの5年間はシェアハウスを転々と4つほど渡り歩いた。東京での最初の家は会社の寮だったが、通勤時間をできるだけ短縮したいという思いから職場の近くに住むようにしていた。仕事の都合上、職場が1年〜2年ごとに変わるということもあり、家具家電が備わっている業者のシェアハウスは引っ越し時のイニシャルコストが安いので私にはおあつらえ向きであった。

シェアハウス運営の種類

シェアハウスと一口に言ってもタイプはいろいろあるが、大きく分けるとこの2つに分けられる。

(A)友人同士で共有する部屋を借りて自ら運営する
(B)業者が運営するシェアハウスに一人で入居する

それぞれ私が感じているメリットとデメリットを整理した。

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私が渡り歩いたシェアハウスはいずれも(B)の業者が運営するタイプのシェアハウスで、入居する前は見ず知らずの人と一緒に住む形態のシェアハウスだ。表の内容については想像に難くないだろう。

シェアハウスを自力で運営する以上は、一緒に住むための部屋・メンバー・間取り・家具・家電はもちろん、家賃の配分や振込などお金まわりのこともすべて自分で取り回さなければならないという運営の難しさはある。一方で、これらの難しさはすべて自分たちで決めることができるという自由度があるという言い方もできる。自由度の高さと運営の容易さはトレードオフである。

ただ、自由度が高いとはいえ自力で運営するシェアハウスの場合は「飽きたからやめる」、「都合が悪くなったからやめる」という選択が取りにくい。なぜなら、すべては一緒に住むメンバーを決めて、そのメンバー全員にパラメータをチューニングしてシェアハウスのサービスを設計しているからだ。3人で住むことで成立していたシェアハウスのうち1人が退去するという事態になれば、2人で家賃を払うことになり、たちまちシェアハウスが破綻する。3人でどのようなルールを設定しているか次第ではあるが、離脱する人は残る2人に配慮して、次に入居する人をあてがうなどの配慮は当然必要になってくるだろう。

私はどちらかと言うと、シェアハウスの魅力は「モノを持たず、いつでもどこへでも引っ越しできること」だと感じていたので(B)の業者が運営するシェアハウスを選んでいた。このあたりは、「シェアハウスに何を求めるのか」という価値観にしたがって選択するのが良い。シェアハウスの運営は大変だけれど、それもシェアハウスの醍醐味の一つだよね、と楽しめるのであれば(A)を選択するのも良い。

この記事では、私が経験してきた(B)の業者が提供するシェアハウスサービスにフォーカスして話をすることにする。

シェアハウスの選び方

シェアハウス選びはいつもオシャレオモシロメディア ひつじ不動産を利用していた。

www.hituji.jp

ひつじ不動産の良いところは、単純な間取りを紹介するだけでなく、そのシェアハウスのサービスレベルについても記載してくれているところと写真が充実しているところだ。清掃やゴミ出しは業者がやるのかあるいは当番制で順繰りにまわしていくのか、利用できる共用家電にはどのようなものがあるのかがとても見やすい。また、ただ横並びでサービスの内容についてをまとめているだけでなく、特設ページなど(運営事業者がひつじ不動産に特別料金を払っている?※想像)で、リアルなシェアハウスの様子を取材しているものもある。このあたりが「オシャレオモシロメディア」を称する所以なのだと思う。

と、ひつじ不動産を持ち上げた割に矛盾することを言うが、はっきり言ってネット上のシェアハウスのサービス内容は参考程度にとどめておいたほうが良い。「こう書いてあったのに」とか「写真と違う」なんていうことはザラにあるので、気になることはすべて内覧等で事前に確認しておいたほうが良い。いや、気になることをすべて確認するというよりも、大げさに言って、そんなことが気になるような性分なのであればそもそもシェアハウスなど考えないほうが良いと言ったほうが正しいかもしれない。それくらいの広い心でWebはあくまでも参考情報としてとらえておくべきである。

シェアハウス選びで注意すべきこと

渡り歩いたシェアハウスは「2段ベッドx4という生活レベルの低い集団生活」から「おしゃれシェアハウス」までいろいろだが、シェアハウスというものは必ずなにかしらの諍いが起こる。それは絶対に避けられないと思ったほうが良い。人は人と一緒に生きようとすると必ず衝突するのである。まして、入居してはじめましての人であればなおさら。もし、いますでにシェアハウスに住んでいて「うちはうまくいっているよ、もめごとなんてひとつもないよ」と思っている人がいるとしたらそれはそれで少し危険。そのように感じているとしたら、あなた以外の誰かが不快な思いを胸に秘めて我慢しながら生活しているかもしれない。

私が経験したいくつかのもめごとの中から、シェアハウスでのもめごとの発生についてモデル化した。部屋は時刻とともに無秩序な状態*1になり、住人の不快レベルは高まっていくため、何かしら手を施す必要がある。赤い線は不快レベルの上下を表している。A氏とB氏の不快レベルの許容範囲を仮定したとき、しきい値が低いA氏だけが不快レベルが高くなった部屋への対処をすることになる。

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これが「私ばかり問題」の構造である。「私ばかり掃除してる」、「私ばかり皿洗いしてる」、「私ばかりトイレ掃除してる」とA氏は感じているのである。しかし、ここでB氏はまったく悪びれる様子もないので、これがまたA氏の怒りを助長するのである。しかし、ここで「B氏わるいやつ」と決め込んではならない。なぜなら「B氏にとっては不快ではないから」である。B氏は本当にまったく悪気がないのである。

ここがシェアハウスの最も難しいポイントである。B氏にとってはとるにたらないことが、A氏にとっては気になることであったり、当然またその逆もある。

育ってきた環境が違うから好き嫌いはイナメナイ
(出典:山崎まさよし(1997)「セロリ」)

のである。今回はシェアハウス選びという意味で論じているが、家族関係や友人関係でも同様のことが言える。あなたはA氏、B氏どちらのタイプだろうか。

おすすめしたいシェアハウスの条件

清掃・ゴミ出しを外部委託している

上記の「私ばかり問題」の発生源でもっとも顕著な清掃とゴミ出しは一定のサービスレベルに従って自動的に行われるシェアハウスを選んだほうが良い。賃料を抑えるためか「清掃は住人による当番制」としているところが非常に多いが、ルールが曖昧だと絶対にうまくいかない。清掃当番は「何を、どれくらいのレベルで清掃したら『清掃した』と言って良いのか」が明確でないと、人によってばらつきがでる。もう一度「私ばかり問題」の構図を思い出して欲しい。清掃は人によって「これくらいやればOK」のレベルが違うのである。人によってばらつきが出ると不平不満が出る。不平不満が出ると清掃当番を放棄する人が出る。

私が経験した最悪のケースは「罰金制度」である。あるシェアハウスでは、業者が提供しているサービス以外に自治で会費を集めてサービスを向上するという文化がすでに醸成されていて、会費は自治の中で独自に家電を追加購入するなどにあてられている様子だった。もちろん、この活動は自治なので運営との契約書には記載されていないし、運営は「そういうものがあるらしい」としか言ってくれない。「自分たちで運営する」というような面倒なことから逃れるために事業者のサービスにのろうとしているのに、結局、自治に巻き込まれてしまうことになった。LINEグループで行われる自治のやりとりの中で「みんなちゃんと掃除しようよ」としきい値の低い人が全体に発信し始めるのである。不平不満を全体にぶちまけた上に「清掃をしなかった人は自治会費500円を罰金として納めること」という懲罰ルールまで制定されることに。

負の強化
・脅迫は、結果を挙げさせる手段としては不完全である
・どれほど強い脅しをかけても、最初に割り当てた時間が足りなければ、やはり仕事は完成しない。
・さらに悪い事に、目標を達成できなければ、脅迫の内容をほんとうに実行しなければならない場合もある。
(出典:トム・デマルコ(1999) 『デッドライン』)

この仕組みは始まった時点で終わっていた。あろうことか、500円で清掃から免れることができるという免罪符として利用する人まで現れ始めたほか、清掃もしないし500円も支払わないという人まで現れ始めた。もう完全に収集がつかなくなった。ちょうどこの頃に勤務地が変わったこともあり、私はここを退去した。これが原因というわけではなく、単純に勤務地が変わったので通例の儀式として引っ越しをしたというだけのことだが、あまり居心地の良いシェアハウスではなかった。

このトラブルのもとである清掃・ゴミ出しについて業者に任せていると、決まった時間、決まった曜日に、決まった場所を、決まったサービスレベルで清掃するので、住人が関与せずとも一定の美しさを保つことができる。これによって住人の中でもっとも不快レベルのしきい値が低い人にも触れない状態をキープできるのである。

パブリックスペースに私物を置かないルールを徹底している

住人の中には「私物だけどみんな使っていいよ」と「良かれと思って」炊飯器を追加したり、電子レンジを追加したり、コーヒーメーカーを追加したりする人が現れる。ここで注意が必要なのは「良かれと思って」やっているので、住人らの合意のないまま行われることもある。私物を共有する人は「誰にとってもサービスレベルが向上する」と思い込んでいるフシがあるが、ここには一つ問題がある。それは「新参古参GAP問題」 である。

シェアハウスの多くは、サービス開始時から住み続けている古参組が存在する。古参組は古参組の中での暗黙の自治が成り立っていることが多く、新参はその存在に気づきにくい。もちろん明文化されているわけでもないので、新参には背景がわからないのである。このあたりは古参組に聞きながらそのルールを吸収するしかない。古参組は新参に優しい人が多いが、自分たちが築き上げてきた自治への思い入れが強い人も多いので細心の注意を払う必要がある。運営との契約の中には存在していないはずの機器がパブリックスペースに置いてある場合、利用して良いのか悪いのかは中の人のみぞ知るという状態になっているのである。故に、最も理想的なのは「パブリックスペースに私物は一切おかないこと」というルールが明文化されていることである。これにより、運営側と新参入居者のサービスレベルが一致するので混乱することがなくなる。中のルールによっては「私物を置いていた場合は、共用物として利用して良い(利用されても文句を言うな)」という緩めの設定をしている場合もあるが、これも認めてはならない。私物を共有する人は「誰にとってもサービスレベルが向上する」と「良かれと思って」そうしているのかもしれないが、必ずしも全員が喜んでいるとは限らないのである。しまいには退去時に「使わなくなったので置いていきます。(みんな嬉しいでしょう?)」と誰も喜んでいない家電を投棄していくということにもなりかねないのである。パブリックスペースには、運営が定めたもの以外は置いてはならないということを徹底することが、秩序の維持には重要だと考えている。

シェアハウスの賃料は高いのか、安いのか

私は「安い」と判断してシェアハウスに好んで住んでいた。この「安い」という判断の中には、上述のメリットが存分に享受できるということも加味している。家賃というものを床面積に対して支払う料金に閉じて考えれば、シェアハウスのほうが高いという見え方になるかもしれない。しかし、家具家電は不要で身一つで入居できるこの身軽さや、首都圏で通勤に便利な物件に住めることを考慮すればシェアハウスという選択は非常に合理的であるといえる。

シェアハウスの冷蔵庫事情についてはこちら

jippahitokarage.hatenablog.com

シェアハウスに住み始めたころの記事はこちら

jippahitokarage.hatenablog.com

*1:エントロピー増大の法則