じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

31歳SIerからユーザ企業の情報システム部門への転職(6)

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■人月ビジネスの矛盾

見積もりは人月という作業量の単位で行われる。(5)でも書いた通り、単位時間あたりにさばける作業量は人によって違う。単位時間にさばける作業量が多いことを一般に生産性が高いという。今回も人月が「量」であることを頭に入れて読んで欲しい。

例えば、期間1ヶ月で3人が張り付く必要がありそうなシステム維持運用業務があるとする。これを単価いくらか x 3人月として、これに利益を幾ばくかのせて見積もりを出す。

システムの維持運用のあるべき姿を何も考えず、何も改善せず、ただ同じことを繰り返していれば何も変わらないかもしれないが、人には慣れもある、ツール化によって効率化される部分もある、過去と同様のインシデントが発生した場合は、その解析も不要だ。最初に見積もった3人月という「量」は確実に減っていくはずである。生産性は高まっていくはずなのである。そうだとすると当然顧客はこう言うのである。「維持運用費を削れないか?」

まっとうな指摘である。生産性が高くなったのであればその分安くなるはずだと。ここが人月ビジネスの大きな矛盾である。企業努力によって成果を上げれば上げるほど売上が下がっていく。何も考えず、同じことの繰り返しをしている方が儲かるということになる。つまり頑張らなければ、頑張らないだけ儲かるのである。もちろんこれは極端な言い方ではあるが、多かれ少なかれこれに近いことは起こりうる。

当然、我々も考えた。「効率化によって空けた工数で改善活動を推進する」とうたい、実践していた。作業が減ったので割引しますという安易なカードを切るようなことはしなかった。作業が減った分新しいことへの挑戦に充てられるというポジティブな表現をし続けた。もちろん、改善活動といってもソフトウェアに手を加えるような改善をするとなれば資本的支出として資産計上されるべき活動に値するので、システム維持運用の修繕費からは逸脱する。維持運用の修繕費としてできる範囲のことを最大限に取り組むということになる。この活動は次期更改への布石である。お客様の信頼を蓄積し、次の開発案件で利益の拡大を図ろうと考えていた。この活動については、お客様の理解を得られ支持してもらえた。このことを理解してもらうまでに多くの時間を必要とした。

ところが、他の会社の様子をみてみると、前述のような同じことの繰り返しはおろか、炎上商法ともとれるお金の取り方をしているところもあるようである。事もあろうに、お客様にある程度の予算が用意されていると知ればそれを取りに行く。本当にその仕事にはそれだけの価値があるのか。

我々のメンバががみな良心のかたまりのような人ばかりだったことが幸いであった。お客様にどのような価値が提供できるのか、我々はいつも考えていた。お客様のビジネスを成功に導くためのITとは。いわゆるコンサルタントと呼ばれるたぐいの人々が考えるような課題に頭を悩ますのであった。

31歳SIerからユーザ企業の情報システム部門への転職(7)に続く。

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