じっぱひとからげ

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31歳SIerからユーザ企業の情報システム部門への転職(2)

#2016/12/04 追記
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#追記ここまで

大学院を修了して、最初の会社として大手SIerに入社した。

■大手SIerの新入社員ライフ

同期が数百人といるので新入社員研修は30名程度ずつにクラスに分かれていた。人事は「いつまでも学生気分でいるんじゃない」といつも言っていたが、クラスごとに分けられ、教室単位で研修を受け、おまけに日直がいて、クラス担任がいればそれはもう学校だ。むしろ、大学のころよりも中学校や高校のような雰囲気に近い。学生気分でいるんじゃないというほうが無理な相談である。

入社した最初の4月は、比喩ではなく本当に毎晩同期と飲みに行った。寮生活と新入社員研修と毎晩の飲み会で同期と濃密な時間を過ごした。この頃仲良くしてもらっていた同期とは、この頃のクラスや職場、寮とも関係なく今でも仲良くさせてもらっている。もっと言えば、ここ数年の間に会社を辞めていった同期もいたが、同じ時期に、同じ境遇で、同じ時間を、同じ会社で過ごした同期とは、今でも連絡を取り合ったり、飲みに行ったり、結婚式を祝ったりと楽しい時間を過ごしている。この経験は今でも本当に良かったと思っている。

■大手SIerの新入社員研修

研修カリキュラムは非常に丁寧で、ビジネス基本動作に始まり、Javaの基礎、JavaによるWebアプリケーション開発の実践を一通り経験する。ビジネス基本動作にいたっては、おじぎの角度から、挨拶の仕方はもちろん、電話の取り方(実際に電話を使って練習する)、客先への訪問の仕方、あるいはお客様が訪問してきた場合の模擬演習をする。今思い出してもとても興味深いのは、上座・下座についても教育されることである。お客様との会議があった場合の会議室ではどこに座るべきなのか、お客様はどこに座っていただくのかという席順、エレベータではどこに位置取るべきか、上司とタクシーに乗るときはどこに乗るべきか。なるほど大手SIerが知っておくべき要素はITに依らずというところかと驚いたものである。これは皮肉で言っているわけではなく、ビジネスにおいては結局こういう細かな気配りや心遣いも効いてくるんだよね、ということを改めて認識したという意味で良い研修だったと思っている。もちろん、これは今の感想で、当時はそんなことは気にしていなかった。つまらない研修だと思っていた。

■初めてのプロジェクト

2ヶ月の研修が終わって配属された先は、大規模プロジェクトのインフラチームだ。これは、後にわかったことではあるが、新入社員はこの手の大規模なプロジェクトにアサインされやすい。理由は簡単で、人数が多い大規模プロジェクトに素人一人を放り込んでも濃度が薄まって客に気付かれにくいからだ。少数精鋭で顧客と対峙するプロジェクトの場合、一人増えるとその原価増が極端に目立つ。あの子は何をやっているの?という顧客の質問に対しての説明がつけられないので、即戦力にならない新卒は大規模プロジェクトに薄めて投入するのである。大規模なプロジェクトとしてIT投資をするようなお客様は勢いのある大きな企業であり、新卒採用や人材育成についての理解があるということもある。「今年の新入社員です」と顧客に紹介することも少なくない。

「いきなり役に立って欲しいなんて思っていない、ゆっくり学んで一人で立ち上がれるようになってもらえれば」と上司は言った。でも自分は違う、一人で立ち上がるどころか、すぐにプロジェクトに貢献できるはずだ、そう思っていた。しかし、それが大きな勘違いだと気づくまでにそう多くの時間は必要としなかった。

変な話だが、私はタイピングが速い。e-typingでいうとベストスコアは526である。

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周囲の人が気持ち悪いと思うほど速い。これは一つの自分の自信ではあった。おおよそ会話と同じペースでタイピングすることができる。だから、現場でありがちな新人に任せられる業務の一つである議事録はいとも簡単にこなすのだと思っていた。

ところが、いざ会議が始まると話の内容がまったくわからず、ついていけない。手が動かない。発言をそのままタイプすれば良いだけなのに、まったく内容が入ってこない。自分が得意としていることもままならない。いよいよ私は朝会の議事録を、翌日の朝書き上げていた。翌朝の朝会の議事録は更にその翌朝に出来上がるのだった。完全に自信を喪失した。こんなにも、何もできないなんて。

ビジネス基本動作ですらまともにできていなかった。協力会社の人と連携が必要な作業があり、私の作業が終わっていることを前提として、後続の作業が予定されていた。にも関わらず、協力会社の人の作業当日になって、私の作業が終わっていないことが発覚し、その日は完全に作業がストップした。

「あの、そんな仕事の仕方でいいんですか?」

協力会社の人から、静かに、そして、冷たくお叱りを受けた。こんなはずではなかった。予定されていた作業が予定通りに終わらないとわかったら、その時点でアラートを上げるべきである。そんなことはビジネス基本動作において当然のこと。そんなこともできないほど手いっぱいだった。私はあまりにも未熟だった。

 

31歳SIerからユーザ企業の情報システム部門への転職(3)に続く

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