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じっぱひとからげ

十把一絡げになんでもかんでもつづる。

言の葉の庭をもう何度も見ている。

2013年5月31日に公開となった新海誠のアニメ映画「言の葉の庭」。劇場とiTunesで同時公開という異例の封切りだった。劇場版を見たその日の晩にiTunes Storeで購入して、もう5回くらいは見ただろうか。

言の葉の庭

言の葉の庭

鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ

家庭環境もあってか心が少しだけ早く大人になった高校生タカオと、教員という仕事上、大人として振る舞わなければならない先生ユキノの、近くて遠い距離感を、世間からは少しだけ離れた雨の降る公園を通じてよく表現されている。

高校生のタカオからすれば27歳のユキノ先生は大人に見えたかもしれないが、たかだか教員5年目や6年目だ。ひとしきり仕事も覚えて、まわりが少しずつ見えてくるようになって、やっと余裕が出てくる頃、そんなところだったのかもしれない。生徒からは慕われ、人気だったユキノであったが、一部の生徒とうまくいかず、学校に行くことができなくなってしまっていた。

「私ね、うまく歩けなくなっちゃったの。いつの間にか」
「それって、仕事のこと?」
「ううん、いろいろ」

雨が降るたびに公園に向かい、タカオとユキノは二人の時間を過ごした。先生は先生らしく大人らしくあるべきという思いの裏では、靴職人になるという夢に向かって突き進もうとするタカオに一種の憧れや焦りを感じながらも、また歩き出さなければと励まされている自分にも気づく。

27歳の私は、
15歳のころの私より少しも賢くない。
私ばっかり、ずっと、同じ場所にいる。

きっとまじめな性格ゆえに、あまり多くを語らず自分の中で解決しようとそう考えていたのだろう。己の演じる強さが本来の自分自身の弱さに負けたとき、ユキノはうまく歩けなくなっていた。そんな弱さを隠しながらも強くあろうとするユキノに、タカオはどうしようもなく惹かれていく。

「ユキノさん、俺、ユキノさんが好きなんだと思う」
「ユキノさん…じゃくて、先生…でしょ」

タカオの気持ちには気づいていたし、その想いに自分自身が救われていたこともわかっていた。でもそこにいつまでもしがみついていては、本当にこのまま同じ場所で歩けないままではないか、そう考えていたのかもしれない。

結局、二人は互いに想い合う関係にはならなかったし、これからもそうなることもないかもしれないが、それ以上に良い関係を築くことができたと思う。互いに歩く練習をしながら励まし合う。それは何にも代え難い素敵な関係だと思う。