エンジニアとして大切なことは全部フィオが教えてくれた。
紅の豚のピッコロ社の飛行艇エンジニアであるフィオから学ぶことはとても多い。
【お客様からチャンスをもらう】
ポルコが飛行艇の修理を依頼したが、ピッコロ社の経験が浅い女性エンジニアであるフィオが設計を担当すると知って、依頼を取り下げようとする。
「金がちっと足りないが昔のよしみだ。残りはローンにしておくよ」
お客様であるポルコの要件を一晩でラフプランにまとめ上げた上で翌朝レビューを通し、設計をお客様と握っている。設計に関する合意形成を早期に行うことはのちの認識の齟齬防止に大きく寄与する。
また、フィオの祖父の会社であるピッコロ社は「前の図面」と表現されている過去のドキュメントがしっかり残っている。それも、木の性質をふまえた設計方針まで残っている。どんなに良い設計でもその方針や意図がわからなければその場かぎりの設計になってしまい、保守性が著しく低下することを良く知っている。
■製造フェーズ初期でのコスト増についてお客様にエスカレーションする
「うーん、たしかに良いアイディアだ」
「わかった、そんな目で人を見るな。好きにやれよ」
お客様との合意がとれればその方針で進められるようすでにベンダへの手配が済んでおり、経営者である祖父とお客様であるポルコからコスト増を認めてもらっている。
■試験の重要性をお客様に説く
テスト飛行なしで飛ぼうとするポルコにたいしてこういっている。
「バカなこと言わないで、テストもしないで引き渡せやしないわ」
お客様に試験重要性を説いているのだ。特に飛行艇という性質から命に関わる事故も起こり得る。また、瑕疵担保責任の範囲を明示的に決めるための受け入れ試験は欠かせないという認識がある。
■エンジニアとしてのプライドを持っている
飛行艇の設計にかける想いや、飛行艇乗りへの想いが仕事に良く現れている。
「壊すって、あたしが作った船を壊す気?あんな綺麗な船を斧で壊すっていうの?…壊すのね。あなたたちそれでも飛行艇乗りなの?あたしね、小さいときから飛行艇乗りの話を聞いて育ってきたの。飛行艇乗りの連中ほど気持ちの良い男たちはいないって。おじいちゃんはいつも言っていたわ。それは海と空の両方がやつらの心を洗うからだって。だから船乗りよりも勇敢で、丘の飛行機乗りより誇り高いんだって。彼らの一番大事な者は金でも女でもない、名誉だって」
そして、紅の豚の最後のフィオの語りで、彼女は祖父を継いでピッコロ社の社長となっていることについてもふれている。